hey MAGAZAINEやぁ

カチッとまじめな話を15分、そのあとガラリと雰囲気を変えておしゃべりを15分。カセットのA面とB面みたいに「商い」について語ってもらいました。もちろんカセットだから、ノーカットで。

話し手:塚原 文奈
聞き手:出川 光

── 今日は「商い」の話を聞きたいんですけど、ビジネスサイドとプライベート両方のお話を聞いてみたいんです。

いいよー!てかビジネスと商いって違うの?

── 確かに…じゃぁ今まで手がけてこられたビジネス、STORES.jpの話から始めましょうか。

そうしよそうしよ。

“いい会社だったからこそ、よくわからない理由でやめてる。”

── STORES.jpは、開始当初からサービス内容は変わっていないですよね。

そう。会社名は株式会社ブラケット(以下ブラケット)ていう名前だったけど、サービス名はずっと同じSTORES.jpでやってきたんだ。はじめっから「誰でも簡単にオンラインストアがつくれる」っていうコンセプトでスタートしたの。そもそも一番最初は、創業者の光本勇介(みつもと・ゆうすけ)が親戚のおじさんから「ECでなんか売りたいんだけどお店つくってよ」って相談された時、「こういうサービスあるからやりなよ」ってリンクを送れるようなサービスがないなって気づいてスタートしたというかんじ。

── 塚原さんはどうやって光本さんと出会ったんですか?

ほんとたまたまで、人の紹介で会ったんだ。当時は自社サービスを運営しながら受託もしていて、そのプロダクトマネージャーを探しているということで会ったの。当時私はフリーランスだったから業務委託のつもりだったんだけど、そうじゃなくて一緒に社員としてやってかない?って言われて。

── フリーランスだったんですね。知らなかった。

そうそう、30歳を機にフリーランスになった。その前はサイバーエージェントにいて、すっごくいい会社だったから、このまま会社にいると抜ける理由がないなと思ったの。仕方ないから30歳になったのを理由にしてやめたんだ。

── けっこう珍しいですよね。

女性って、出産するかもとか、結婚するかもとか、ライフステージに関する大きな選択をこのあたりの年ですることが多いじゃない?本当はそんなことはないけど、そういう選択をすることによって使える時間が減っちゃうんじゃないかと思ったんだよね。当時から結婚はしていたんだけど子供はいなかったから、失敗したりチャレンジしたりするなら今がいいなと思って。いい会社だったからこそ、よくわからない理由でやめてる。

post-1-4-1-01

“テンション上がる管理画面!”

── STORES.jpをリリースするのは大変でした?

うーん。リリースする前より、した後のほうが大変で。たとえば、EC(※1)サイトのキットを提供する身としては特定商取引法に準じたフォーマットを作らなきゃいけないんだけどツメがあまかったり。話題にしてくれる人が多かった分、いわゆる炎上状態になっちゃって。リリースしたときに、今までのサービスと違って反応がいいぞと手応えを感じたと同時に、慣れない炎上でてんやわんやしてた。

── STORES.jpを作るとき、大切にしたことってありますか?

まず誰にでも使いやすいこと。そしてテンション上がる管理画面!

── テンションが上がるってどういうことですか?

管理画面を使ってすてきなものを作れるサービスはあるんだけど、すてきな管理画面って少ないんだよね。ドロップボックスのシンプルさとか、昔のiPhoneの説明なしで全部わかるかんじとか、テンション上がるよね。

── 作るの難しそうですよね。

説明の文字を少なくして、視覚的に情報が伝わることを心がけて作ってたなぁ。あと、必要な人にしか情報を見せないということも。たとえばECサイトのロゴをつける設定項目がある。そのとき、ユーザーには日本語でロゴを打ち込みたいひとと、すでにロゴの画像を持っているひとがいる。だいたいの人は前者で、「いつかは用意したいけどとりあえず今ないや」って感じじゃない?だから、はじめは日本語でロゴを打ち込む部分は見えているけど、画像をいれるっていうボタンをオンにするまで画像を入れるのに必要なアップロードボタンは隠しておく。その人に今必要なものだけを見せるように気をつけてきた。もちろん素晴らしいうちのメンバーのみんなとね。

── 今もシンプルさにかなりこだわっていますよね。

サービスって時の流れとともにレガシーさが受け入れられなくなるタイミングあるじゃない?「当時はイケてたけど今ちょっとね」みたいな。そうならないようにしたくて、複雑にしないように気をつけている。サービスは続けていれば基本的に機能は増えていくんだよね。だから思い切って機能をやめたり、施策や機能の追加を制限したりもする。負債になっちゃうからね。

post-1-4-1-02

“決済が商いにおける機能なら、コミュニティ管理は商いにおける絆づくりみたいな”

── STORES.jpって、当時の商売の仕組みを大きく変えたように見えます。

そうかもしれないね。当時STORES.jpが受け入れられた大きな理由は、決済を提供したこと。クレジットカード決済とか、コンビニ決済とか、今ECで当たり前に使われている決済機能って、当時個人やスモールビジネス(※2)の人がするにはけっこうハードルが高いんだよね。まぁ銀行振込もあるし、究極なくてもいいんだけど少しハードルになるでしょう。私たちみたいなサービスがかなりハードルを下げたことで、ECをやってみようかなという人を増やせたと思う。

── SNSのプラットフォーム上で決済できるようになってしまったらどうなんでしょう?

これからそうなりそうだよね。だからこれから大切になっていくのは顧客管理かなと思ってる。ひとつふたつだったらSNS上で写真のせて決済するのでもいいけど、20個、30個となると在庫管理が連動してないと大変じゃない?自分のファンはどのくらいいて、その中でどういう密度でコンタクトがとれていて、何人が買ってくれているとか、そういうことが大事になってくるなって。

── SNSにはそいういう機能はつかなそうということですか?

うん、それもあるし、SNSごとに持っている顔が違う人もいると思うんだよね。そういう時に、一括で自分が持っているコミュニティの情報を知りたいじゃない?自分のコミュニティを管理するのに注力していきたいなと思っている。

── ECサイトキットの次のステージって感じですね。

まさにまさに。最初は難しいことを簡単にできる機能を提供したから、次はそのコミュニティを育てて管理できるようにしたいの。

── 決済は機能で、その次ってことですよね。

そうそう。決済が商いにおける機能なら、コミュニティ管理は商いにおける絆づくりみたいなかんじかな。

※1 Electronic Commerceの略で、電子商取引のこと。企業間または企業と消費者間、消費者間でインターネット上で物やサービスを売り買いすることを指す。
※2 小規模で行なっているビジネスのこと。

  • 塚原文奈

2003年に新卒で株式会社インテリジェンスに入社。2004年に株式会社サイバーエージェントに入社。フリーランスとしての活動を経て、2012年、STORES.jp立ち上げ前から株式会社ブラケットに入社し、COOとなり、事業や会社全般のマネジメント業務に従事。2016年より同社(現在:ストアーズ・ドット・ジェーピー(株))のCEO就任、現在に至る。
More Articles