hey MAGAZAINEやぁ

カチッとまじめな話を15分、そのあとガラリと雰囲気を変えておしゃべりを15分。カセットのA面とB面みたいに「商い」について語ってもらいました。もちろんカセットだから、ノーカットで。

第二回の今回は株式会社ツクルバ共同創業者・共同代表であり、コミュニティコインアプリ「KOU」仕掛け人の中村真広さんです。

── 中村さんって、あまり「商売人」というイメージではないですよね。

もともと商売とか好きじゃなかったんですよ。大学で建築を学んでいたこともあって、商売よりもつくることに興味が向いていました。

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── どこかで意識が変わったんですか?

2011年に行ったクラウドファンディングがきっかけですね。あの時集まったお金にはあたたかさを感じた。お金を払うだけではなく、応援コメントをつけてくださったことや、26歳の若造2人に応援してくれたことに、なんで、と驚きました。それまではビジネスのことは浩輝(株式会社ツクルバ共同創業者の村上浩輝さん)にまかせておけばいいと思っていたんですけど、考えが変わりました。

── クラウドファンディングを行う時、寄付でもよかったと思うのですが。

物を返すことで、後につながる関係性が欲しかったんですよね。クラウドファンディングのお返しに、co-ba (※) の利用権を設定したことで、関係をつなぐことができたと思うんです。

── 手がけていらっしゃるサービスでも、人と人とのつながりを意識しているんですか?

そうですね。例えばco-ba (※) は、これから頑張る人のために賃料をあまり高くしていません。チャレンジする人を支援しようと思ってやっています。KOU (※) はコミュニティコインアプリという言い方をしていますが、やりたいのはコミュニティ運営に特化したサービスで、コインはつながりを可視化する手段なんです。

── cowcamo (※) は不動産仲介なのでつながりとは遠そうに感じます。

それがそうでもないんですよ。中古リノベーション物件を買うのって、すでにあるマンションコミュニティに入ることでもあるんです。購入は確かに円を介した等価交換だけど、そのあとはKOUの世界観に近いんです。

※co-ba:渋谷をはじめ全国に展開しているコワーキングスペース
※KOU:コミュニティコインのアプリ。コミュニティ内での感謝をコインで送り合うことができる。
※cowcamo:中古リノベーション住宅の流通プラットフォーム

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── よりつながりの強い「商い」に、条件はあるのでしょうか?

健全な不等号があることですね。

── というと?

商いって一般的には、等価交換が終わるとリセットされるじゃないですか。”ガムを買ったら100円払う、以上”みたいな。でも僕は等価交換じゃない関係性が好きなんです。例えばよく行くお店で、すごく美味しかったのに思いの外安いと、いいんですか、という気持ちが生まれる。そうするとまた来ようかな、と思ったり、お店の良さをまわりに伝えようと思ったりするんです

── 商いのアップデートにはどんな可能性がありそうでしょう?

交換経済は、欲しいものがお金があればすぐに手に入れられるという自由を獲得してきた代わりに、人との関係性がなくても物を買えてしまう世界を作ってしまった。でも、そうじゃなくて人間関係がないと生まれない交換や、贈与がありえると思うんです。さらに言えば、「贈与」って贈る側が主語になっていますが、受け取る側の気持ちが主語になってもいいんじゃないかと思います。だから僕はそれを、感謝経済と呼んでいるんですけど。

── 受け取る側が主語って、どういうことですか?

去年屋久島に行った時、そこでただただ与えられる経験をしたんです。綺麗な空気も水も、どれだけ使っても請求書が来るわけじゃない。でも東京にいてシャワーを浴びたらお金がかかりますよね。その時に、受け手が「これ、ありがとう!」って思った分だけ価値が生まれると思ったんです。これからは、交換経済の一方でこんな感謝経済も存在していていいんじゃないかと思いますね。

株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO(Chief Community Officer) 1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年、実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する、場の発明カンパニー「株式会社ツクルバ」を共同創業。デザイン・ビジネス・テクノロジーを掛け合わせた場のデザインを行っている。著書に「場のデザインを仕事にする」(学芸出版社/2017)他。
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