hey MAGAZINEの最初のテーマは「商い」、それなら商いの現場を見ないと始まらない。インドアで有名なヘイ株式会社の経営メンバーがやってきたのは、商いのなかでもより生産者と密接な対話が繰り広げられるファーマーズマーケットです。青空の下で飛び交う呼び声と野菜やくだものの匂い。約束の時間に現れない佐藤裕介さんを待ちながらマーケットを歩くこと30分。短い時間のうちに、たくさんお買い物をしてきたみたいです。
入るやいなや取材クルーを置いてお買い物に没頭するおふたり。
──枝豆、高くないですか? 一袋1,000円って、けっこうな値段ですよ。
塚原文奈(以下、塚原): いや、でも、街のスーパーだと同じものは買えないですよ。それに作り手の人と会話する、やっぱり値段に説得力が生まれる。
農家さんや加工品を作った人と直接話しながら買い物を楽しんでいるご様子。
── その前は、別の生産農家の店先でずいぶん話し込んでましたね。
佐俣奈緒子(以下、佐俣): 下田から、家族みんなで来て出店してるとこですね。お子さんが説明してくれるのが、めちゃよくて。2012年から野菜を育てて売り始めたって言ってたけれど、きっと彼らはそれまでやっていた何か別のお仕事を辞めて、野菜農家を始めたんですよね。
塚原: ストーリーが、あるよね。
── 出た、ストーリー。「売る側のストーリー」なんて言葉が、最近マーケティングの現場やなんかでよく言われてましたが、そういう話ですか?
佐俣: たとえばスーパーにある野菜って、ストーリーは薄めですよね。スーパーで求められるのは、むしろ「効率的に買えること」だったり「一定の品質」だったりするじゃないですか。
── ええ。
佐俣: でも、その場に作り手がいると、なぜそれを作っているのかだとか収穫までの大変さだとか、一個一個の野菜に詰まっている話が表に出やすい。
塚原: 応援したくなるよね。
鮮やかな野菜をそのまま並べて売っているのもファーマーズマーケットならでは。
佐俣: もちろんスーパーだって、並んだ商品の向こうに作り手はいるんです。でも、スーパーはそれを「見えないコミュニケーション」で売る。一方、ここでは「価格じゃない価値」が生まれているんですよね。
── 価格じゃない価値、ですか。
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塚原: 続けて欲しいっていう、応援の意味で買うってこともあるのかも。先ほどの農家の方の野菜はすべて不揃いなんだけど、そこが生々しくて。
佐俣: そう、生々しいんだよね。規格品じゃない、手づくりのお菓子、みたいな。
塚原: その分、こだわりが、バシバシ伝わってくる。
── 「付加価値で値段を上げる」って商売の基本ですよね。下田から来た農家の家族にお二人が感じたものは、それとは違うんでしょうか? 野菜を売っているようにみえて、彼らは実は野菜以外の何かを売っている、とか?
佐俣: 枝豆を売ってるお店、ほかにも何軒かあったんですよ。みんな値段は違っていてそれぞれ理由があるんでしょうけれど、私からすると一袋1,000円でも1,500円でも、どちらでもいいんです。値段で買っているわけではない。
塚原: 値段はあまり、見てないよね。
佐俣: 試食したら美味しかった、話していたら楽しかった。だから、買っちゃう。コミュニケーションを買っている感じです。
「さとくんのお土産どうしよう?」「やっぱおしゃれなやつかなぁ」
マーケットで売り手と会話しながら買い物をしていると、どうやらお金を払っているのはストーリーやコミュニケーションだということが見えてきました。お二人が手がけるSTORES.jpやCoineyでもそれは再現できるのでしょうか。そして、その先に目指す未来とは?
佐俣奈緒子
塚原文奈