TALKYのスケボーの形をした箸置きを初めて見た時、不思議な安心感があった。カワイイだけじゃない、絶対に手にした時がっかりしないだろうなという説得力。取材に出かけると待ち構えていたのは自他ともに認める「クリエイティブマッチョ」な気のいいTALKYメンバー。TALKYのバックグラウンドにあるカワイイだけじゃ済ませられない話を聞いてきた。
TALKYメンバーは3人。河村さん、須田さん、そしてもう一人はTALKYネームしか明かせないというからこの記事ではHさんと呼ぶ。なぜってこの3人、それぞれ表の顔を持っていて、河村さん(以下、K)はYEAH RIGHT!!のデザイナー、須田さん(以下、S)は美大の先生でもあり音楽家、Hさん(以下、H)は国内某ブランドのデザイナーなのだ。不思議な縁で3人がつながり、TALKYをやることになった。ここまで聞いたところで「カワイイですよね」なんて言葉は引っ込んでしまった。
K:「TALKYは民芸に自分たちのカルチャーをミックスできないかと始まったの。例えばこれは初期に作っていたFaceシリーズ。本当はデパートの陶器売り場に並ぶような商品なんだけど、ダサいじゃん。だから陶器の表面に砂を吹きつけるサンドブラストっていう方法でスクラッチ(*1)して柄を剥がしたんだよね。それがNudeシリーズ。それにグラフィティをほどこしたのがWallシリーズ。」
H:「最初はちょっとずつ傷をつけて柄を残す感じで剥いでたんだけど、まだダサいの残ってるから全部やっちゃおうぜって。全部剥いでみたら、もともとついていた柄の痕跡が残るんだよね。それなら全部剥いじゃっていいね、って。」
ダサいから剥いだ、なんて言っているけど、これらのシリーズが生まれた背景はちょっとエモーショナルだ。メンバーのひとりの出身は波佐見焼で有名な長崎県は波佐見町。窯元が同級生で、「陶器の墓場がある」と波佐見焼のB品が大量に廃棄されている事実を知ったのだ。それなら解決しようとTALKYメンバーが腕まくりしてこれが生まれたというわけ。
*1 引っかいたり、傷をつけること。DJがターンテーブルでレコードを動かし音を鳴らす奏法でもある。
アイディアは飲み会のおしゃべりから生まれる。その後よりすぐりのアイディアを(取材では「二日酔い後に覚えてるもの」と言っていた)形にする。百戦錬磨の彼らは工場との交渉や発注もお手の物だし、そこに甘えはゼロだ。
S:「飲み会で、アイディアがでてくると、こういうのどう?って紙ナプキンに絵を描いたりして。同じ美意識を持っているから、簡単な図でも何をやりたいかちゃんと伝わる。」
K:「でもみんな酔っ払っちゃうから、企画の8割は忘れられてるんだよね。でTALKYのLINEグループに、『これ覚えてる?やるよー』って連絡が入る」
H:「でもやるとなったら、すごいちゃんとやる。それは癖がついちゃってるんじゃないかと思いますね。」
最近はやりの、「SNSでユーザーの声を聞きながら商品を作る」ようなことはしないんですか?なんて聞いてみたら一刀両断だった。
S:「途中を見せるなんて、そういう教育受けてないんですよ。『お前が一番いいと思うものをぶつけてこい』っていう人たちに育てられてきたから」
H:「今も本気でやってるやつはそうでしょ?最後までやりこんだものをみなさんにお見せする、っていう」
K:「SNSが流行る前は僕らもストーリーやコンセプトを語っていたんだけど、飽きちゃったんだよね。」
H:「昔、藤原ヒロシさんがインスタグラムにTALKYの写真あげてたよって友達に教えてもらった時でさえ、僕らは『すげえ!、、、インスタグラム???ヘェ〜?』みたいな」
全員:アハハハ
彼らがTALKYを続けているのも、彼ららしい理由だった。
H:「俺、陶器にスクラッチしたぜ、って言いたいっていう」
S:「要は楽しいからだよね」
K:「そう。それと友達に会うために続けてる。何か一緒にやっていないと会わなくなっちゃうから」
それにしてもさ、となかば飲み会の様相を呈しはじめた取材現場でまだまだ話に花が咲く。
K:「大人になってもスケボーやって、レコード屋まわって、こんな感じで楽しくやってるなんて思わなかったよね。きっとみんなもそうなんじゃない?だから、スケボーとかレコードをモチーフにしたTALKYが喜ばれてるんじゃないのかな?」
S:「でも作ってる俺らのマインドは、ただ何かやりたいだけのクリエイティブマッチョなんだけどね」
H:「そうそう。今の若い人はこんな記事、読んだらソッコー飛ばすわ」
K:「だね」
TALKYメンバーと渋谷の夜はふける。帰りぎわ、「これ持っていきなよ」ってスケボーの形をした箸置きをくれた。思わず「うれしい、カワイイ」とつぶやくと、照れ臭そうに「やっぱそう言われたくてやってるのかも」だって。
TALKY
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